円安とともに国債金利が上昇。これは財政破綻への道なのか?

円安とともに国債金利が上昇。これは財政破綻への道なのか? 「破綻はない」という人にぜひお聞きしたい

山田 順 | 作家、ジャーナリスト、出版プロデューサー
2013年5月14日 1時45分
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■円安で国債市場が動揺、不気味な金利上昇

円安が進んでいるため、国債市場が動揺している。金利も上がってきた。
5月13日、シドニー市場で円が対ドル一時102円台を記録すると、前場から売り圧力が強まり、国債先物は大幅に続落した。そして、後場になると、営業日比 1円を超える下落となったため、5月10日に続きサーキットブレーカーが発動された。

この日、新発10年物国債(328回債)の利回りは0.74%で始まり、一時的に0.80%と2月6日以来の0.8%台を記録してしまった。異次元金融緩和の効果で国債金利は下がると黒田日銀総裁は言ったが、どうやらそうなっていないのだ。

そこで、ここでどうしても問いかけたいことがある。
「日本は財政破綻しない」「日本の借金は内国債だから問題ない」などと言っている方々。また、アベノミクスを大歓迎している方々。さらに、リフレ派とその応援団のエコノミスト、評論家の方々などに、お聞きしたい。
日本の財政はこれで本当に大丈夫なのですか? そして、財政破綻しないと本気で思っているのですか?と――。

■国の借金991兆円、1人当たりおよそ778万円

5月10日には、財務省から国の借金の発表があった。それによると、国債や借入金などを合わせた国の借金の総額は、昨年度末の時点で前の年度末より31兆円余り増えて991兆6011億円となったという。

NHKはこのニュースを「日本の総人口で単純に割りますと、1人当たりおよそ778万円の借金を抱えている計算になります」という解説入りで伝えていた。さらに、「財務省は、今年度末には国の借金の総額は1107兆円に達し、初めて1000兆円を突破すると見込んでいます」と結んでいた。

毎年毎年、このような発表がある。そのため、「日常茶飯事化」して、私たちは何も感じなくなってしまっている。しかし、これは「黒田バズーカ砲」よりすごいことではないのか?

■無限に国債を発行することはできるのか?

昨年度は44兆円余りの国債が発行された。さらに、アベノミクスによる緊急経済対策のための補正予算で、さらに新規国債が発行された。もはや、国債発行(借金)は歯止めが利かなくなっている。

こういう状態を、上記した方々はどうお考えなのだろうか? もちろん、一般の方々でもかまわない。毎年、際限なく国の借金が積み上がっていくが、この点をどう考えているのだろうか?

このような状態を放漫財政と言うはずだが、それを続けていっていいのだろうか? ここ数年、国の借金は40~50兆円ペースで増えている。毎年の税収より多く借金を重ねている。
そこでもし、このペースでいくとあと10年もすると1500兆円になる。20年後は2000兆円に達する可能性がある。それでも、日本は財政破綻しないのだろうか?
無限に国債を発行し、無限に日銀券を刷り続けることが可能なのだろうか?

■かつては朝日新聞も一面で「国家破産」

ついこの間まで、大手メディアも「国家破産」を警告していた。ところが、アベノミクスが始まってからは、そういう論調はまったくなくなった。
思い起こせば、あの朝日新聞ですら、2011年の大晦日(12月31日)の朝刊一面トップで、「国家破綻を防げ」と題して、編集委員・小此木潔氏の次のような論説を掲載している。

《「景気が悪いのに増税とは何事か」「無駄削減が先決」いずれの意見にもうなずきたくなるが、増税を先送りしていけば未来はどうなるだろう。
待っているのは「国家破綻」ではないか。野田政権が前途多難を承知で消費税率引き上げ方針を固めたのも、その危機感からに他ならない。
政治は今こそ、増税を言うと選挙に不利だといったソロバン勘定でなく、国民のために行動しなければならない。先の参院選で「消費税は当面10%」と打ち出した自民党はもちろん、増税に反対した野党も、年明けから国民の目の前で本格的な議論に入るべきだ。》 

まさに堂々たる主張。このままでは国家破綻が必至だから、その回避策として増税をと、訴えていた。小此木氏のこの論説はさらに次のように続く。

《絶対に避けるべき「国家破綻」とは財政の破綻であり、社会保障と経済社会全体の危機でもある。やがて一千兆円を上回る政府債務(借金)が雪だるま式に膨れ上がれば日本の国債が売られ暴落する日が来る。国債を保有している銀行が巨額の損失をこうむり、金融恐慌と大不況に陥りかねない。大量失業で家計も社会も困窮する。年金も医療、介護などの福祉も荒廃し、国民全体が苦難を味わう。
こうした破綻を防ぎつつ、大震災からの復興を進め、社会保障の安心を土台に新しい時代の経済成長を促進したい。そのために増税は求められている。》

要するに、増税すれば国家破綻は防げる。だから、増税が必要ということで、結局、消費税の増税が決まったとされるが、それでは国家破産は回避できたのだろうか?

■富裕層はどちらかに賭けるようなことはしない

財政破綻(国家破産)には、とくに定義はない。国家破産が単に国債のデフォルト(債務不履行)を言うなら、それは実務的には回避できるからだ。
日本人が持っていようと外国人が持っていようと、国債を償還するには、日銀が際限なく紙幣を刷って国から直接国債を買い取ればいいからだ。しかし、お札を刷りまくれば、通貨への信認がなくなる。つまり、円の価値はなくなり、ハイパーインフレになる可能性がある。そうなると、これは実質的には破綻しているのと同じだ。

私は、アベノミクスには悲観的だ。財政規律を忘れて、危険な賭けに出たとしか思えないからだ。インフレが2%ということは、金利も2%にならなければおかしい。国債金利が低いままで2%のインフレが来るとは思えない。

アベノミクスは資産バブルを起こすだけだろう。私がこれまで取材してきた富裕層や投資家は、ほとんどが日本の財政破綻に備えてリスクヘッジをしている。財政破綻があろうとなかろうと、どっちに転んでもいいようにしている。なぜなら、彼らはウォーレン・バフェットが言うように「未来はわからない」と考え、どちらかに賭けるようなことはしないからだ。したがって、こうした論争にも加わらない。

■政治家がケインズが好きな理由とは?

私には、アベノミクスは公共投資を拡大して景気を刺激するというケインズ政策にしか思えない。これを自民党はバブル崩壊以後ずっとやってきて、結局、失敗している。じつは、ケインズでさえ、公共投資の必要性は説いたものの、公共投資が必要なのは不況期だけで、それを毎年のように期待することは社会主義への道であると、指摘していたと思う。

これに対してハイエク(オーストリア学派)は、政府の過剰な市場介入による不況対策の行き過ぎが次のバブルを生むとしていたと思う。私の理解では、ハイエクは、「バブル崩壊に対して次のバブルを起こして克服しようとしても根本解決にはならない」としていたはずだ。

ところが、政治家はケインズが大好きだ。政治家とは、権力を持つとそれを使いたがる人々だから、その象徴として、手にしたおカネ(予算)をばらまきたい。つまり、市場をコントロールしたがるのだ。私は、人々の自由な活動から生まれる経済を政治がコントロールするのは、政治家の思い上がりだと思っている。

政治が経済を完全にコントロールすることなど本来できない。しかし、財政を破綻させないことぐらいはできる。本当にこのまま借金を続けていって大丈夫なのか? 破綻はないと絶対に言い切れるのか? ぜひ、聞かせてほしい。


山田 順
作家、ジャーナリスト、出版プロデューサー
1976年立教大学卒業後、光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙と電子の両方の出版プロデュースも手掛ける。専門分野は、メディア、経済、ビジネス。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)、『円が消滅する日』(日文新書)、『新聞・出版 絶望未来』(東洋経済新報社)など。

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