ベネズエラ国民のパンを手に入れる戦い

ベネズエラ国民のパンを手に入れる戦い
主食のトウモロコシ粉を手に入れるのも苦難つづき


2016 年 9 月 30 日 15:35 JST

 セルバ・アラウホさんが、ベネズエラで「アリーナパン」と呼ばれるトウモロコシの粉をようやく1袋手に入れるまで、長蛇の列に並んでも手ぶらで帰る日が3週間続いたという。アリーナパンが工場から家庭の台所に運ばれるルートはいくつかあるが、いずれをたどっても経済が困窮する現状が見てとれる。

最低価格で購入する方法
(1袋の価格:190ボリバル(約20円))

 ベネズエラは、豊富な石油の富をよりよく分配するとの名目で民間企業を国有化し、公的資金を浪費する経済政策を10年間続けた。その結果、インフレ率は世界最高水準に達し、今年は700%に達する見通しだ。政府はハイパーインフレ対策として基本的な食品について価格を固定したが、そのために食料不足はいっそう拡大した。

 多くのスーパーマーケットは、トウモロコシ粉「アリーナパン」を、政府の決めた統制価格190ボリバルで販売している。ベネズエラの朝食や夕食によく食べられる薄焼きパン「アレパ」の主な材料となる。

 アリーナパンを製造する大手食品メーカー、エンプレサス・ポラールは民間企業だが、政府は製造から配送に至る同社事業のあらゆる段階に関与する。政府はポラールがトウモロコシを設定した価格で仕入れることを義務づけ、同社の施設をたびたび検査し、従業員を拘束することもある。ポラールをはじめとする企業がマドゥロ政権を揺るがす目的で食料を買いだめしていると非難し、それを阻止する措置だと主張しているのだ。

 トウモロコシ粉が極度に品薄状態なため、ポラールの輸送トラックはたびたび襲撃されている。同社は首都カラカスまで商品を運ぶのに無表示のトラックを使い、ドライバーは出発直前まで最終目的地を知らされない。ある強盗犯はトラックのフロントガラスを撃ち抜いた後、ドライバーの腕時計やネックレス、携帯電話を奪ったうえで「アリーナパン」を持ち去ったという。輸送トラックが危険な地域を通過するときは武装兵士が護衛している。

 スーパーマーケットに商品が到着すると、買い物客は何時間も列に並ぶことを覚悟させられる。順番が回っても商品が残っている保証はない。また、購入できる量も制限されている。どのくらいの頻度でどのくらいの量を購入しているかを監視するため、当局は身分証をチェックする。

価格統制を切り抜けるための「コンボ」
(1セットの価格:約1000ボリバル)

 カラカス市郊外の住民が利用するのは「ボデガ」と呼ばれる小さな食料雑貨店だ。こうした店でもスーパーと同じ統制価格で商品を売る義務がある。ただ、スーパーの場合は、アリーナパンで利益が出なくても、顧客が入店すれば他の商品を買ってくれることで商売が成り立つ。一方、ボデガは他に売るべきものが少ない。

 ボデガはこれを切り抜けるために「コンボ」を売る。アリーナパンと一緒にパスタやヨーグルト、バター、石けんなどをセットにし、1000ボリバル前後で売る。トウモロコシ粉の単品より約5倍高い値段だ。

 スラム街の住民にとっては市中心部に出かけ、スーパーの列に並ぶのは高くつく。食料がそこに確実にあるかどうかもわからない。このボデガでは「コンボ」が積み上げられ、いつでも販売できる状態にある。

 黒インクで手の甲に書かれた数字は列の順番を表している。客は防犯ゲートの小さな窓から商品代金を払う。ある店主は、もしゲートを開いたら、人々が店内を荒らし回るだろうと語った。

闇市場(ブラックマーケット)
(1袋の価格:最高で2000ボリバル)
 闇市場は、行列に並ぶことができない、または並びたくない、さらに2000ボリバル(統制価格の10倍以上)にもなる割高な金額を払える人が利用する。闇市場で商品を転売する「バチャケロ」は犯罪者とみなされることもあるが、現在の経済状況では必要だとの見方もある。

 バチャケロとして働くジェルドさんは「これはすべての人に影響するサプライチェーンだ。誰でも食べなくてはいけなから」と話す。彼は闇市場でトウモロコシ粉を売るため、バイクタクシーの運転手の仕事をやめた。「(闇市場では)何でも高価なのは皆知っている。でも今は経済危機のさなかだ。誰もが困窮している」と語った。

 ジェラルドさん自身、闇市場でモノを売るのは危険だと話す。逮捕の恐れと背中合わせだからだ。警官や国家警備隊の兵士に「商品の一部をただで差し出すこともある。逮捕されないため、見逃してもらうためだ」という。警官も国家警備隊もコメントの求めに応じなかった。

食料配布に乗り出した政府
(1袋の価格:190ボリバル)
 長蛇の列を解消し、闇市場を取り締まるため、政府は「地区供給生産委員会(CLAP)」を通じて1カ月に1度、食料の入った袋を配布することにした。政府の通知によると、アリーナパンは統制価格の190ボリバルで販売される。

 ある日、2000世帯が住む地区でアリーナパンなどが入った数百袋の食品配布が始まった。ネットワークが未整備なまま、ピックアップトラックを使い、一部の住宅を急造の配布センターにした。それでも品切れになるまでに対象住民のおよそ半分に届けることができたという。政府は各家庭への配布を効率的に行う手段やノウハウを持ち合わせていないとの批判があり、配布が散発的で必要な所に届いていないという声も多く聞かれる。

出来上がったトウモロコシのパン
 アラウホさんはカラカスのスーパーで、政府の決めた値段でトウモロコシ粉を買うことを選んだ。しかし多くの時間を浪費するうえ、大いに不満が募るやり方だ。「頭痛がするし、足も痛い」と彼女はこぼす。「行列に並んでいる間に25ポンド(約11キログラム)以上やせた。国家警備隊の兵士から暴力を受けたり、スーパーの警備員に侮辱されたりもした」と話す。国家警備隊はコメントの求めに応じていない。

 それでも彼女はあえて行列に並び続ける。「私はバチャケロからは買わない」と、闇市場には見向きもしない。「違法なことや不正直なことはきらい」だからだ。当然ながら、値段も彼女にとっては高すぎる。国営石油会社の職員を引退したアラウホさんは、かねて1週間に2袋のトウモロコシ粉を買い、アレパを毎日食べてきた。「アリーナパンはベネズエラ人の主食。食習慣は変わっても、ベネズエラ人は誰でも朝起きたらアレパかボリートを食べる」と、トウモロコシ粉で作る定番メニューを挙げた。「神のご加護を願っていればなんとか暮らしていける。残念ながら、私たちの社会全体はあいにく不調だけど」

(原文:A Struggle for Daily Bread)

(訳者: 今リアルタイムで起きているベネズエラのハイパーインフレの情報はほんと参考になります。ベネズエラでハイパーインフレが始まってもう3年近く経つんじゃないでしょうか?うちの犬猫のフードは最低3年分蓄えとかなきゃ。。。)

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No title

マッドマックスか北斗の拳か、物凄い世紀末の世界ですね。
もしくは、戦後の闇市ですかね。・・・・・人の命が軽いのが恐ろしい。

何か色々と学べますね。・・・・3年どこか10年位続きそうですね。どうなるんでしょうかね。何れ救世主が現れないか。・・・・悲し。

今の内に食糧買っときましょか。
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